健康アドバイス                〜糖尿病〜

  「糖尿病とはどんな病気?」

  糖尿病(とうにょうびょう)は、遺伝などを背景にして、膵臓(すいぞう)から分泌される
 インスリンというホルモンの作用が足りないために、体内で糖分がエネルギーとして十分利用
 されず、血糖値(血液中の糖分の値)が高くなったり、尿に糖が出たりする状態です。

  ふだん私たちが食物から取る栄養素(糖質・蛋白質・脂質など)は、エネルギーとして使わ
 れますが、この中で一番よい燃料となるのは糖質(糖分)です。食べたご飯やパン・果物など
 の糖質は、腸の中でブドウ糖に分解されて吸収されます。そして脳や筋肉や各臓器などの細胞
 に取り入れられてエネルギーとなります。また、肝臓にはグリコーゲンという形になって蓄え
 られます。

  ところが、ブドウ糖が利用されるにはインスリンが必要になってきます。もしインスリンの
 量が少なかったり、効きめが悪いとブドウ糖をエネルギーとして利用することができなくなり、
 血糖が高くなってしまいます。

  つまり、血糖値(厳密には血液中のブドウ糖の濃度)が高いということは、エネルギー不足
 となっている証拠で体がだるくなったりします。


  糖尿病の症状としては次のようなものがあります。
   ・体がだるくなる(全身倦怠感)
   ・のどが渇く(口渇)
   ・水をたくさん飲む(多飲)
   ・尿が多量に出る(多尿)
   ・食べすぎる(多食)
   ・食べるわりに痩せる(体重減少)
   ・他にも種々ありますが、無症状  のことも多いです。

  しかし、症状だけから糖尿病の状態や程度を判断してはいけません。
 健診で尿糖を指摘されている人、糖尿病の疑いがあると言われている人、糖尿病だとわかってい
 る人の中にも、自覚症状がないからといって放置している人がけっこういるようです。糖尿病を
 甘くみてはいけません。糖尿病を放っておくと必ずその人の寿命は縮まります。なぜなら、自覚
 症状がない間にも、糖尿病による変化が身体の中で徐々に起こっているからです。



  「糖尿病の合併症について」

  糖尿病は血糖が高くなり、その結果しだいに血管や神経を傷めつけ、腎臓や眼や神経をはじめ
 全身の至るところに障害を起こす病気です。
 今回は、糖尿病の合併症について説明したいと思います。
 
 ●急性の合併症
   急性の合併症にはインスリンが極端に不足して起こる
 「糖尿病性昏睡(とうにょうびょうせいこんすい)」があります。
 これは糖尿病が非常に悪化した時に起こります。例えば、医師に指示されたインスリンの注射や
 血糖降下剤(内服薬)の服用を中断したりすると、血糖値が急激に上昇し(通常500r/O以上)、
 意識がなくなり(昏睡状態になり)、短時間のうちに死の危険を招くものです。

  また逆に、血糖値が急激に下がるために起こる「低血糖昏睡(ていけっとうこんすい)」が
 あります。これは糖尿病の治療の過程で起こるもので、厳密にいえば合併症とはいえません。
 例えば、インスリン注射や内服薬で治療中に、食事を取らなかったり激しい運動をしたりして血糖が
 下がりすぎて起こります。
 いずれの場合も、直ちに治療をすれば治ります。

 ●慢性の合併症
  糖尿病のさまざまな合併症のうち最も特徴的なのは、毛細血管(もうさいけっかん)やその周辺の
 細い血管の障害によって引き起こされる病変です。毛細血管は全身にあるので、その障害も全身に起
 こりますが、なかでも特に重要なのが、眼の網膜(もうまく)・腎臓(じんぞう)・
 末梢神経(まっしょうしんけい)にある毛細血管の障害で、これらの病変は糖尿病の三大合併症と
 呼ばれます。

 <糖尿病性腎症(とうにょうびょうせいじんしょう)>
  糖尿病による腎機能障害です。蛋白尿が出て、徐々に腎不全(じんふぜん)となり、
 重症になると尿が出なくなり人工透析を受けなくてはならなくなります。

 <糖尿病性神経症(とうにょうびょうせいしんけいしょう)>
  糖尿病になって5年くらいの比較的早期から現れてきます。手足のしびれや神経痛のような痛み・
 感覚障害、下肢の筋力低下の他、発汗異常・立ちくらみ・膀胱障害・インポテンス(性欲減退)・
 便通異常等の自律神経障害(じりつしんけいしょうがい)も起こります。

 <糖尿病性網膜症(とうにょうびょうせいもうまくしょう)>
  眼の網膜の細い血管が障害され、はじめは目がかすむ程度ですが、重症になると眼底出血
 (がんていしゅっけつ)などが起こり失明してしまいます。糖尿病の人は定期的に眼科で検査を
 受ける必要があります。

 <動脈硬化(どうみゃくこうか)>
  糖尿病になって十数年たつと、脳や心臓・手足などの血管に動脈硬化が起こり、場合によっては
 狭心症・心筋梗塞・脳梗塞・閉塞性動脈硬化症(へいそくせいどうみゃくこうかしょう)他、
 命にかかわる重大な病気を引き起こします。

 <感染症(かんせんしょう)>
  感染症とは、細菌やウイルスなどが体に入ることによって起こる病気のことです。
 糖尿病患者は感染症にかかりやすく、治りにくいので注意が必要です。かかりやすい感染症と
 しては、肺炎(はいえん)・膀胱炎(ぼうこうえん)・腎盂腎炎(じんうじんえん)・足や陰部の
 皮膚の炎症などがあります。

 慢性の合併症は、その他にもありますが、糖尿病の治療の目的は、これらの合併症を予防することにあります。



  「糖尿病の食事療法について」

  糖尿病の治療には、食事療法・運動療法・薬物療法がありますが、食事療法は糖尿病の
 治療の基本です。これをおろそかにして他の治療をしても、良い効果は得られません。
 逆に、食事療法をしっかりやっていれば、軽い糖尿病の場合は、薬の内服やインスリンの
 注射をしなくてもよい場合があります。

  糖尿病の治療の目安は、血糖値のコントロールにあります。血糖値は空腹時には低く、
 食後は高くなります。当然その時の食事の内容によっても違います。
 ですから、単に1回の血糖の値だけで、糖尿病の状態が良いか悪いかを判断するのはよく
 ありません。(もちろん参考にはなりますが・・)

  糖尿病の食事療法は、医師に指示されたカロリーの食事を取るわけですが、
 ポイントは次のようなことです。

 (1) 栄養のバランスを考える。(これは非常に大切なことです)
 (2) まとめ食いは避ける。(規則正しい食事の時間と量)
 (3) 糖尿病だからといって食べてはならない食物はない。(量の取りすぎに注 意)
 (4) 味付けはうすく。(塩・砂糖・しょうゆ・ソースに気をつけて)
 (5) 朝食を十分に、夕食は控えめに。
 (6) 腹七分目を守る。
 (7) 外食は偏りに注意。
 (8) 他人の食事話にまどわされない。

  糖尿病の患者さんに指示されるカロリーは、一般的には、標準体重と労働量によって計算
 されますので、当然、個人個人で違います。肥満の人は、糖尿病でなくてもこの食事療法を
 しっかりやれば、理論的には体重が減り、標準体重に近づくはずです。

  糖尿病食は、単に糖尿病の患者さんだけのものではなく、万人の健康長寿のための理想的
 な食事といえます。

 過食と偏食は、肥満やその他の成人病を引き起こす原因となります。
 期せずして糖尿病食が、これらの予防にもつながっているのです。


 「糖尿病と動脈硬化」

 糖尿病の合併症としては網膜症・腎症・神経症の三大合併症が有名ですが、
それと関連して動脈硬化は非常に大きな問題となっています。
すなわち糖尿病の人は健康な人に比べて非常に動脈硬化を起こしやすいということです。

 動脈硬化によって引き起こされる心筋梗塞・狭心症などの虚血性心疾患や脳梗塞などの
脳血管障害、そして下肢の血管等が詰まる閉塞性動脈硬化症等は生命にかかわってくる
恐ろしい病気です。

 糖尿病の診断の一つに糖負荷試験というのがあります。
これは主に75gのブドウ糖の入った飲み物を飲んでもらい、その前後で血糖値や
インスリンや尿糖等を調べて判断します。
この検査で正常か糖尿病かその間の境界型(耐糖能異常)かというのがわかります。

 境界型というのは糖尿病予備軍等と言われたりしますが、動脈硬化の引き起こし
やすさというのは糖尿病と同じだという事がわかってきました。
ですから全身の血管の動脈硬化は糖尿病になる前の状態からすでに健康な人に比べて
進行しているということです。

 また、いくら糖尿病(血糖値)のコントロール状態が良好といっても動脈硬化を
予防する事については非常に気をつけなければなりません。

 予防法としては、血圧を厳重にコントロールする事(最低でも130/80以下に)、
コレステロールや中性脂肪をコントロールする事、肥満の解消と予防、禁煙、適度な運動、
ストレスの解消等が挙げられます。

 糖尿病や境界型の人は食後の高血糖が動脈硬化を引き起こす重要な因子になっていますので、
食後高血糖を予防するためにかため食いをする事は避けて規則正しい食生活を
心がけなければなりません。

 現在のところ大丈夫でも、家系(血のつながりのある人)に糖尿病の患者さんがいる人は、
若いうちから肥満にならないように心がけて下さい。